ダイエットを始めた時は、食事や運動について目標を立て前向きに取り組もうと思っていても、思い通りにいかない日が出てくるものです。仕事が忙しくて運動する時間が取れなかったり、食事管理が続かずに食べ過ぎてしまったりする事もあるでしょう。
そのような時、自分に対してどのような言葉をかけていますか?「またできなかった」「自分は意志が弱い」と、必要以上に自分を責めてしまう方もいるのではないでしょうか。
ダイエットでは、食事や運動の方法だけでなく、取り組む過程で生じるストレスや挫折感との付き合い方も重要です。
そこで今回は、心理学で注目されている「セルフコンパッション」という考え方を取り上げ、ダイエットを継続する為の心の向き合い方について考えていきます。
自分を責める心理がダイエットを苦しくする
ダイエット中に自分を責めてしまう背景には、完璧を求める心理が関係している事があります。特に、目標に対して高い基準を設定し、少しでも達成できないと自分を厳しく評価してしまう人は注意が必要です。
例えば、毎日運動する事を目標にしていた人が、一日休んでしまったとします。その時、「今日は運動できなかった」と考えるだけでなく、「一日も休まず続けられなければ意味がない」と捉えてしまう事があります。このに、物事を成功か失敗かの二択で判断する思考は、心理学で「全か無か思考(白黒思考)」と呼ばれています。
この思考の問題は、実際の成果を正しく評価できなくなる事です。例えば、一週間のうち6日間運動できていても、一日休んだ事だけに注目すれば自分の取り組みを失敗と評価してしまいます。本来は十分に行動できているにも関わらず達成できなかった部分ばかりが目に入り、自信を失いやすくなるのです。

更に、自分の行動への評価が、自分自身の価値を否定する自己批判に変わる事もあります。自分は意志が弱い、何をやっても続かないといった考えを繰り返すと、失敗への不安が強まり、新しい行動を始める事にも消極的になりかねません。
また、強い自己批判は心理的なストレスにも関わります。ストレスを感じた時に食べる事で気持ちを落ち着かせようとする人もいる為、自己批判によるストレスが食行動に影響する可能性もあります。もちろん、ストレスによる食欲の変化には個人差がありますが、精神的な負担がダイエットの継続を難しくする要因の一つになる事は考えられます。
この様に、完璧を求める心理や自己批判は、目標に向けた努力を支えるどころか、時には継続を妨げる要因になります。ダイエットを長く続ける為には、こうした自分への厳しさとの付き合い方も考える必要があります。
セルフコンパッションとは何か?
そこで知っておきたいのが「セルフコンパッション」です。セルフコンパッションとは、失敗や困難に直面した時にも、自分自身に思いやりを持って接する心理的な姿勢を指します。心理学者のクリスティン・ネフによって研究が進められ、主に3つの要素から構成されています。
1つ目は「自分への優しさ」です。自分が失敗した時に、厳しい言葉で自分を責めるのではなく、親しい人に接するように思いやりを持って対応する事を意味します。自分に対して過度に批判的になるのではなく、失敗した時にも自分を大切に扱う姿勢です。
2つ目は「共通の人間性」です。失敗や悩み、思い通りにいかない経験は、自分だけに起こるものではありません。誰にでも弱さや不完全な部分があり、失敗を経験しながら生活しているという、人間に共通する性質を理解する事です。
3つ目は「マインドフルネス」です。今感じている感情や状況を、過度に否定したり、反対にその感情に飲み込まれたりせず、ありのままに認識する姿勢を指します。例えば、失敗した時の悲しさや悔しさを無理に消そうとせず、今、自分がそのような感情を抱いている事に気づく事が大切です。
この3つの要素が組み合わさる事で、困難な状況にある自分を客観的に捉えながら、思いやりを持って接する事ができるようになります。
ここで理解しておきたいのが、セルフコンパッションと自己肯定感の違いです。自己肯定感は、自分自身を価値ある存在として評価する事に関係します。一方、セルフコンパッションは、自分の能力や結果が良い時だけでなく、失敗した時や自信を失っている時にも、自分を思いやる姿勢を持つ事です。その為、何かを達成できたかどうかに左右されにくいという特徴があります。
また、セルフコンパッションは自分を甘やかす事とも異なります。目標を諦めたり、改善すべき事を放置したりするのではなく、自分を罰するような厳しさに頼らず、自分の心の状態を大切にする考え方です。
研究では、セルフコンパッションが高い人ほど、ストレスや不安、抑うつなどの心理的な負担が少ない傾向にある事が報告されています。また、失敗や挫折を経験した後の心理的な回復や、目標に向けた行動の継続にも良い関係が見られています。こうした特徴から、セルフコンパッションは、長期的な取り組みが必要なダイエットにおいても役立つ考え方として注目されています。

セルフコンパッションをダイエットに活かすには?
セルフコンパッションをダイエットに活かすには、実際の生活の中で起こる問題に合わせて、取り組み方を調整する事が大切です。食事、運動、体重の変化では、それぞれ異なる原因や対策が考えられます。
例えば、食事管理ができずに食べ過ぎてしまった場合、食べた量だけを問題にするのではなく、その時の食事内容や空腹の程度、生活状況を確認してみましょう。朝食や昼食が少なく、夕方に強い空腹を感じていたのであれば、食事の量や配分を見直す必要があります。また、仕事のストレスや疲労が関係していたのであれば、食事以外の方法で気分転換できる時間をつくる事も一つの方法です。
運動については、継続できる環境を整える事が重要です。仕事が忙しくて時間が取れない人と、疲労によって身体を動かす余裕がない人では、必要な対策が異なります。前者であれば短時間のトレーニングを取り入れる、後者であれば休養を確保して運動量を調整するなど、自分の生活や身体の状態に合った方法を選びましょう。
更に、体重が思うように減らない時は、短期間の数字だけで判断しない事も大切です。体重は水分量や塩分摂取、便通、月経周期などの影響を受けて変動します。その為、数日間の増減だけでダイエットの成果を評価するのではなく、一定期間の推移を確認する必要があります。体重だけでなく、食事のバランスや活動量、トレーニングの実施状況なども合わせて見る事で、取り組み全体を適切に評価しやすくなります。
実際に取り組む際は、次の3つを意識してみましょう。
◆事実と感情を分ける
食べ過ぎた、運動できなかったという事実と、自分はダメだという感情的な評価を区別する。
◆状況を具体的に確認する
空腹・疲労・ストレス・時間不足など、行動に影響した要因を整理する。
◆次の目標を調整する
原因に合わせて食事や運動の方法を見直し、実行できる行動を決める。
ここで大切なのは、目標を達成できなかったからといって、極端な方法で埋め合わせをしない事です。食べ過ぎた翌日に食事を大幅に減らしたり、運動できなかった分を一度に取り戻そうとしたりすると、身体への負担が大きくなり、かえって継続が難しくなる場合があります。
ダイエットは、短期間で全てを完璧にこなす競争ではありません。自分の生活や身体の状態に合わせて方法を調整し、長期的に取り組める習慣を作る事が重要です。
まとめ
ダイエットでは、目標を達成できなかった時に自分を責めてしまう事があります。しかし、完璧を求めすぎたり、自分の能力まで否定したりすると、精神的な負担が大きくなり、継続する事が難しくなる場合があります。
そこで役立つのが、セルフコンパッションという考え方です。自分への優しさ・共通の人間性・マインドフルネスという3つの要素を通じて、失敗や困難に直面した時にも、自分を思いやる姿勢を持つ事ができます。
頑張れない自分を責めるのではなく、自分の状態を理解しできる事から取り組んでいく。
自分に優しくする事は、ダイエットを諦める事ではありません。自分の心と身体の状態に目を向けながら、無理なく続けられるダイエット習慣を作っていきましょう。

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